かえるくんのおうちラボ blog

おうちでぼんやりと思うこと

ステロイドパルスをするよ④ 年越しパルス

ステロイドパルスの2クール目です。

前回までのステロイドパルス編はこちら

treefrog-labo.hatenablog.com

12月30日は病院は休みですが腎臓の主治医の先生が来て、丁寧にいままでのおさらいとこれからの見通しをはなしてくれました。といっても病状説明というより気楽に朝の検査結果を持って病室にきてさらさらと話をして、さあ透析だって言って走っていきました。

以下は、実に個人的かつマニアックなはなし、つまり「ぼくマニア」感がある話なのですが、本当に同じ治療で情報を探すひとには、なにかしら参考になるかもと思ってそのまんま書きます。

 

腎臓と腎障害のメカニズム

このあと難しい言葉もそのままです。今日はぼくも忘れちゃいそうなので聞いたまんまのメモです。それでも最初に腎臓の基本的なことを押さえておくと大体なんの話かわかりそうなので整理しておきます*1

腎臓はこんな臓器

そして腎障害はこんなふうに進みます(糸球体がダメになるパターンの時)

これで大体の様子はわかりました。

腎臓内科の先生の話

ここから実際の先生のおはなしです。普通に会話しながらの話でしたがちょっと言い切った感じにまとめました。予想や不確定な見解も断定みたいになってる可能性がありますがそれは先生のせいではありません。

 腎臓の値

パルスをすることで血尿は400倍の顕微鏡で1視野あたり50~99個から5~9個まで下がってたのでこれは良い値。よく効く人だとこのパルスが終わる時点で0まで持っていける。「いま」と「これから」の炎症が抑えられるかという点で良い指標。

タンパク尿も下がっていて良い。水分摂取で*2尿の比重も軽くなっていて食事も良いので、仕事中ぜんぜん水をのまない生活とタンパク摂取が多い状態が改善していることも含めて効いてそう。ただ蛋白は0にならない人もいる。0.3g /日未満まで下がれば一応、腎臓の炎症的には寛解*3と考えている。

少しずつステロイドを下げた時に再燃するとか血尿が消えない・タンパクがそこまで減らないっていう時はARB*4を追加する、もしくはSGLT2阻害薬*5を追加するというのも考える。ARBは輸出細動脈*6を緩めるので圧を下げてくれる。ただそこまで血圧が高くないので逆に下がりすぎると急性腎障害になっちゃうから。SGLT2阻害薬が糖尿病がない人にも心臓とともに腎機能の保護作用があることがわかってきた。ただ尿排泄がすごく多くなるので水分摂取をすごく心がけけえもらわなければならない。本当にしっかり炎症を抑える時にはシクロスポリン*7を使うこともある。ただクローン病のためにすでにインフリキシマブ*8で免疫を抑えている以上、これ以上の免疫抑制はしたくない。最初に選択したブデゾニド*9は少し調べてみたところ確かに長期的にも良い成績がある。どこかでステロイドをブデゾニドに切り替えて維持療法に持っていくのは良いかもしれない。

また、扁摘の後で血尿も尿蛋白もおさまらずあれっと思っていると口蓋扁桃を摘出しても上咽頭炎*10が起こって原因になっていたということもある。このケースではBスポット療法という上咽頭を焼くという治療法がある。ただ残念ながら近隣でこの治療をしている施設がない。治療前のMRIで上咽頭の方に腫れがあったというのは気になる。

[上咽頭の場所]*11

(あ、パンが飲み込めなくなって貯まる場所とほぼ一緒だ。)

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あとは、血尿や尿蛋白がしっかり下がり切らないなら副作用予防に飲んでいる薬で尿細管障害*12などが起こって腎機能の影響があることも考えられる。少しこの辺は薬をうまく調整して切り抜けたい。

 採血で気になった点

Crea*13が一昨日に比べて少しまた上がっている。気にするほどの値ではないがステロイド投与で腎臓の糸球体の炎症はすみやかに抑えられるけれど、すでにある程度炎症が進んで硬くなってきている糸球体は一気に駄目になると言われている。そのあたりの影響かもしれない。

白血球は上昇していてステロイド使ってるなーという感じだが不思議なのはリンパ球がまずまず多いこと*14。そして好酸球が0にならないですね。ステロイド始まると好酸球なんかはすぐ減るので、好酸球が0%じゃない患者さんを見かけると(あれ?ちょっとステロイドさぼっちゃったかな?)って用心したくなるんですが、今の入院ではそんなはずないので、へーってかんじ。

CKはわずかですが下がってきました。わずかだけれど下がってるなら良しでしょう。ステロイドで上がってるなら、今は変えようがないのでちょっと目を瞑ってやっていきます。明日からBP製剤*15始まりますが、これも含めて他の薬の副作用ならちょっと量を加減したり薬を変えたりと調整をがんばりましょう。年明けにまた採血でその後のフォローをしましょう。

いまの治療で怖い一番は強い免疫抑制で、以前行っていたステロイドの使い方だとしっかり減らせるまで最低でも2年はかかっていた。今行っている扁摘と組み合わせたこの仙台式*16になってパルスの終わった時から隔日30mg=実質1日15mg程度の量まで減らせるので以前に比べると感染の脅威は小さくなった。ステロイドの総投与量も少なくできるので合併症の点でも有利。ステロイドの減量がすすめば、副作用のための薬も早めに減らしていきたいな。

 今後の見通し

最初はステロイドが1回15mgに減るくらいまでは私の外来に毎月きてもらえるといいなと思う。その後は2ヶ月に1回にしましょう。

以上、先生とのお話まとめでした。

年越しパルス

冒頭に書いた通り、こんなことを病院が休みになった30日の朝に来て丁寧に話をしてくれました。見通しまで聞けて、外来も自分の外来にということですっかり安心してパルスを始めました。

今回は12月30日、31日、1月1日の年越しパルスです。

例によってとくになにもなくパルス中です。よいお年を。

 

iPadもペンもあるのに、絵をかく時にコピー用紙にサインペンでいきなり描いて写真撮るしかできないぼくを来年はなんとかしたい。

*1:今回も完全にぼくの理解なので文末には「しらんけど」を頭のなかで付け加えて読んでください

*2:入院後は測りながら飲んでいます

*3:治ったわけではないけれどひとまず病勢は鎮まって静かにしてくれている、治ったに近い状態でこれをゴールに目指します。クローン病でも同じ言葉をつかいます。参照:IgA腎症 診療ガイドライン2020https://jsn.or.jp/academicinfo/report/evidence_IgA_guideline2020.pdf

*4:アンギオテンシンII受容体阻害薬という種類の血圧の薬です。心臓と腎臓をほごしてくれる作用があります。

*5:血糖値を改善する糖尿病の薬です。やはり心臓と腎臓を保護してくれる作用があることがわかってきています

*6:上の図にある出口をちょっと締めるとこです、

*7:免疫抑制剤です。臓器移植や骨髄移植でも使われる王道というかクラッシックなお薬。商品名ネオーラル

*8:抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体といういわゆるバイオ製剤。炎症性サイトカインと呼ばれる炎症を起こすシグナルをブロックする。同時に免疫も抑えられるので炎症メインで抑え込むような結核など注意が必要。商品名レミケード

*9:特に粘膜によく作用してあまり全身にはまわらないステロイド。いろんな剤型があるけれど、ぼくは最初IgA腎症がわかった時にクローン病の関連するIgA腎症に対して欧州で使われていたブデゾニド内服について消化器内科と腎臓内科に相談して使っていました。使用後は腎機能の低下はピタッと止まったので扁摘をはさんでパルス直前まで継続してました。

*10:下図参照

*11:塩味がないよ③に出てたごっくん君に来てもらいました。今回はごっくんせずに。

*12:上の図にあった尿の元を集めて尿にする管

*13:クレアチニンという採血の検査項目。腎臓ですんなり排泄される物質のはずなのでクレアチニンが溜まって高くなってくるということは腎臓が悪くなってるということ。

*14:ステロイドは免疫を抑えますが実は白血球の数はかなり増えます。だいたい1万を超えてきます。これは体中にくまなくいた白血球や血管の壁でいつでも飛び出す準備をしていた白血球がとりあえず待機状態をやめて血管のなかでのんびり漂流するようになったせいです。採血するといっぱい入ってくるというだけで体ぜ全体としてはそれほど増えているわけじゃありません。白血球のなかでも好中球というのが増えてきて、リンパ球というのはむしろ減ってきます。好中球はその場で愚直に戦う兵隊さんで、リンパ球は離れた敵も見つけ出しピンポイントで精密射撃するドローンのような兵隊さんです。ステロイドを使うと普通は好中球ばかりになりリンパ球は影を潜めます。ちなみにあとででる好酸球というのはアトピーやアレルギーの関わるタイプの兵隊です。

*15:ビスホスフォネート製剤。顎を溶かすこともある骨粗鬆症のお薬です。

*16:

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