かえるくんのおうちラボ blog

おうちでぼんやりと思うこと

塩味がないよ ① - 味覚障害のはなし(扁桃摘出術編)

前回の味覚障害のはなし

treefrog-labo.hatenablog.com

 

 

2022年9月16日に扁桃摘出術という手術を受けました。

知りたい人もいるかも知れないのでちょっと病気や扁桃摘出術のことを書くけれど、とばしてもらって構いません。(長いので目次をつけました)

病気のはなし

このあとに書いてあるクローン病とIgA腎症のはなしは、それほど需要はないかなと思ったり。

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クローン病という腸の病気がわかったのが25年くらい前、そしてIgA腎症という腎臓の病気がわかったのが2年前でした。

 クローン病

クローン病というのは、かんたんに言うと「なぜか自分の免疫システムが小腸と大腸を中心に、消化管粘膜を内側から攻撃するようになって、びらん(ただれ)や潰瘍や時には消化管に穴を開けるなどの炎症を慢性的に起こす病気」です。炎症を繰り返すと腸管ががちがちに繊維のようになって食べ物が通らなくなったり、大腸に穴が空いてたりして手術になることもあります。難病情報センターのリンクを貼っておきます。

www.nanbyou.or.jp

ぼくは21歳の大学生のときに発症し、当時はなかなか良い治療もなく日数を足すと2年半ほど入院しながら大学に通いました。結局在学中に1回、そして社会人になってから1回ずつ腸に穴が空いて腸管切除手術を受けたので、いまはほとんど大腸がありません。それでもS状結腸というところからは残っているのでわりと大丈夫です。最初の手術では前の夜に病衣から一度ジーンズに履き替えてみてベルトが当たる位置なんかを確かめながら、もし人工肛門を開けることになったらここにしようねってマジックで印をつけてもらったりしてたので、麻酔から覚めた時にS状結腸がのこってるよと言われてホッとしました。なつかしい。

 IgA腎症

IgA腎症というのは慢性的な炎症のせいで、本来は体を守るための免疫システムが異常なIgA抗体(免疫タンパク)を作ってしまうようになり、それが腎臓に悪さをすることで引き起こされます。日本やアジアでは扁桃など上気道の慢性炎症が引き金になっている事が多いと言われますが、欧州では炎症性腸疾患(クローン病はこれにあたります)との合併が多い病気です。例によって(あんまり詳しくない)リンクは以下です。

www.nanbyou.or.jp

 欧風の治療、ブデゾニドでごめんあそばせ

さて、それぞれの病気はあるのですがクローン病はもう長い付き合いなので治療は割と現状を維持するのが基本方針となっていますが、いまの問題はこれからなんとかコントロールしなきゃいけないIgA腎症です。

IgA腎症はのどちんこのそばの扁桃という部分の免疫が悪さをしてると言われていて、まずは扁桃の免疫と炎症をおさえることとステロイドで全身の免疫と炎症を抑えることが基本方針です。

でもね、日本やアジアではそうだけど、上で書いた通りヨーロッパではクローン病のような炎症性腸疾患がIgA腎症の原因の一つと目されているんです。

これじゃない?ぼくヨーロッパ風なんじゃない?実際、僕はのどが腫れて熱が出たという事がほとんどない一方で、クローン病ではこれまで腸に穴があいたりと割と大変でした。これはどうやら腸管の炎症が本命っぽいぞと思って、主治医の先生と相談しながら、今続けているクローン病の治療(インフリキマブという薬の定期投与)に加えて、まずは欧州で炎症性腸疾患に対して試みられているブデゾニド*1(ゼンタコート)という薬を追加してみたのでした。

www.thelancet.com

※ちなみに何度も書きますがこれは日本でのIgA腎症の一般的な治療ではないので注意してください。IgA腎症には扁桃摘出術+ステロイドパルスがゴールデンスタンダードです。

https://jsn.or.jp/academicinfo/report/evidence_IgA_guideline2020.pdf

欧州でもIgA腎症で炎症性腸疾患との合併がめちゃめちゃ多いというわけでもありません。(それでも明らかに多いけれど)

academic.oup.com

で、ブデゾニドを始めてどうなったかというと、メキメキ悪くなっていた腎臓の検査値はピタリと悪化しなくなりました。やったーと言いたいところですが、たしかに効果はあったのですが1年6ヶ月続けても血尿も尿蛋白が止まることはありませんでした。

もうちょっと良くなってくれないと数年後には透析ってことになるかな?という感じなので、やっぱりいま出来ることは全部やっておこうということで扁桃摘出術をすることにしたのです。シルバーウィークを利用して扁摘手術を終えたら、その後はちゃんとお正月休みにステロイドパルスも予定しています。

-----------------------✂︎ココマデ-----------------------

いざ扁桃摘出

というわけで扁桃摘出術です。

 扁桃のはなし

今回手術でとることになった扁桃は正確には口蓋扁桃とよばれるもので、ドイツの解剖学者のハインリッヒ・ウィルヘルム・ワルダイエルさんが発見した口の奥にある「ワルダイエル輪」を構成する一部です。「へんとうせん」という呼び方のほうが親しまれているかも。

ワルダイエル輪は口から入る外敵に対して、「のどち●こ」のあたりでグルっと輪っかのようになって体を守る最前線基地で、そこにいくつかある扁桃はリンパ球(白血球の一種)の駐屯地みたいなものです。

ちなみに扁桃っていうのはアーモンドのことで、体の他の部分にもアーモンドの形に似ていることから扁桃と呼ばれているものがあります。

 扁桃摘出術のはなし

いやー、扁桃摘出術(扁摘:へんてき)なめてたわ。全身麻酔は何度目でもイヤなものだけどお腹切るよりマシだよねって思ってた時期が僕にもありました。

以下は扁摘についてです。イラストと画像でサクサクいきましょう。

えー・・・切った後むきだしなの?

かさぶたができるまでの1週間とかさぶたが剥がれる頃の1ヶ月あたりが血が噴きやすいそうです。

 

・・・・・(これから扁摘を受けるひとたち)

 

どうみても拷問だわ。

www.medicalexpo.com

さあ手術です。

 術後のはなし

このあとちょっとグロです。見たくないひとはさっとスクロールしてください。

手術室は8時30分入り、麻酔からさめて部屋にもどったのは11時30分でした。

(喉が腫れてイグアナになった気分です(あごひげそりました)口の中では血がじわじわむにゅむにゅしてました)

「術前におもってたより扁桃大きかったよ」

といって見せてもらったのは、人差し指の第2関節よりちょっと短いみたいな塊×2個でした。ちなみにぼくは顎が外れるんですが、この時も開始早々から外れてたそうです。

食事は翌日から出ます。


ここからは毎朝のどの痛みにうめく日々です。

弱気になるとつい「こんなに痛いなんて、もしかして自分だけ治療が上手くいかなかった?」と思いがちなので、どんな感じか書いておきます。

  • 1日のうちで朝が一番痛い。少し良くなったかと思うと翌朝の痛みに絶望する。
  • 予想通りしばらく声出すと痛くて、唾液飲んでも痛い。
  • 寝そべると血液が頭のほうに上がってきて痛くて悶絶する。そしてしばらくすると喉の奥でなにかが垂れ下がってきて息ができなくなる。
  • おかゆだろうが軟飯だろうがとにかく「お米」が張り付いて痛い。おかずの方が食べられる。
  • ごはんはたべられなくても3日目くらいからTULLY'S(←病院にあった)のカフェラテはHOTもICEもおいしく飲める。

「わたしも去年扁摘したんです」と来てくれた看護師さんがいましたが、朝が痛いのとベッドに横になると息ができないのは同じでした。耳鼻科の先生の話ではほとんどの人が2日目の朝が一番痛いのだそうです。

腎臓への負担を考えて最初は痛み止めがアセトアミノフェンというやさしい薬だったのですが、さすがに痛すぎて4日目からはセレコキシブというガツンとくる痛みどめになりました。そのせいかどうかわかりませんが、ぼくはちょっとベッドに横になれない期間は多分長めで、金曜日に手術をして月曜日までは夜もずっと座っていて、完全にフラットで寝られたのは水曜日(5日目)からでした。

(家族へのメールが良い記録になりました)

ちなみに、クローン病ではエレンタールという成分まで分解された栄養剤も治療に使いますが、このエレンタールは飲んでもあまり痛くないのは助かりました。  消化吸収が必要なくて粘膜の細胞が直接栄養として利用できる点でもおすすめです。

エレンタールのフルーツトマト味、クーリッシュだけ食べられたという情報がよせられましたがぼくは無理でした)

よこになれないので、ベッドに座るかシャワーを浴びる以外は部屋の片隅で垂直に座ってコーヒーを飲みながら仕事をしてました。

(仕事場出現)

麺類が食べやすいかなと思って主食の変更を希望しましたが、治療食(腎臓食)のためか連休のためかなかなか変わらず。

明日の朝から変わりますと言われて出てきた朝食は「パンといちごジャムとマーガリン」になっていて本当は海苔とごはんでした。わけがわからないよ。

そんなこんなで9日目に無事退院しました。

ちなみに退院前にクローン病に対してインフリキシマブ(レミケード)を投与してもらったけれど、投与中に「うわっ」ていうくらい喉が腫れてくるのがわかりました。ひえー。「炎症を止める薬だけど、こんな時に使うと一気に消費されちゃうかねー」なんて話してましたが、まさに大量にのどで消費された感じです。

 退院

入院前に66.9kgだった体重は61.6kgになっていました。

退院した日はとりあえず麺類にしようと思い、リンガーハットの冷凍チャンポン麺を3口くらい食べました。入院前は「退院したら食べたいなー」と思って冷凍庫をのぞいていたけれど、なんだか美味しく感じないのでした。

それでもこの時はのどに滲みるボウモア12年に声にならない悲鳴をあげながら、うまーい!と思って飲んでいたのでそれほど気にしてなかったのです。

続く。

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塩味がないよ ② - 味覚障害のはなし(ぼくの羅針盤 シーフードヌードル) - かえるくんのおうちラボ blog

 

*1:日本ではこの薬がクローン病治療に保険で使えるのでできたわけですが